沿革と現状

陶器や瓦は、往時の歴史的背景とかかわりを持ちながらまた沖縄の人々の生活のなかで大きな役割を果たし、常に産業として位置づけされてきました。沖縄における焼物の歴史は、考古学的年代の土器をのぞけば、城跡などから出土する高麗瓦や大天瓦が最も古いと言われています。14~15世紀になると中国や南方諸国と貿易が盛んになり、中国からは、多量の陶磁器が輸入され、輸入陶磁器時代を迎えます。これ等は、琉球国の王侯貴族たちの間でも利用されましたが、一方では貿易品として周辺諸地域へ輸出されることもありました。このころになると南方から、いわゆる「南蛮焼」と称する技術の伝来があり、琉球の「泡盛」醸造ともかかわりを持って来たものと考えられています。

尚永王(1573~1588年在位)の頃、瓦奉行所が設置され、瓦並に陶器を主管させたと文献に記録されています。そのころには、瓦が本格的に焼かれ、城や寺などの建築材料として使われたようです。

1682年(天和2年)、当時の琉球王府は、美里村(現沖縄市)の知花、首里の宝口、那覇の湧田にあった窯場を現在の那覇市壺屋に統合し、陶器産業の振興を図ったと記録されています。従って、現在の壺屋は、300年余の歴史を有しつつ伝統の火を燃やしつづけています。1972年の本土復帰と相前後して、陶芸ブームや観光客の増加によって、壺屋の陶業も活気をあびるようになりましたが、いろいろの隘路を打開するために、今までの任意組合を法人組織化し、昭和50年10月、壺屋陶器事業協同組合を設立、組合事業を開始しました。昭和51年6月、経済産業大臣より、伝統工芸品「壺屋焼」の指定を受け昭和52年1月には壺屋陶器会館が完成して、原材料の共同購買、展示、即売、検査事業、販路開拓等、組合本来の事業を一層活発に行っています。壺屋焼は上焼(ジョーヤチ)と荒焼(アラヤチ)に分かれ、上焼の素地原料は古我地、喜瀬、安冨祖、前兼久、山田、喜名、石川の粘土等であり、釉薬原料としては、具志頭長石、コウイル、マンガン粒、サンゴ石灰などがあります。荒焼の原料は島尻粘土のクチャ及びマーヂなどです。

技術と技法Ⅰ

壺屋焼を大別すると「荒焼(アラヤチ)」と「上焼(ジョーヤチ)」の二種に分けることができます。荒焼はいわゆる南蛮焼のことで、無釉又はマンガン釉を掛 けた酒甕、水甕、味噌甕などのダイナミックで大きなものが多く、これに対して、「上焼」は釉薬を施した食器、酒器、花器類など比較的小さいものが多く、今 日の陶器の主流をなしています。壺屋焼に先行する湧田焼、喜名焼なども含めた沖縄の陶器の特徴は、中国、東南アジア諸国、朝鮮、薩摩などの影響を受け、これを消化しながら沖縄の風土と環境にあった独特な陶器を作り出してきたところにあります。

壺屋における陶器の製造工程は図のとおりです。喜瀬、古我地、石川の各粘土は単味成形に使用され、前兼久、山田、喜名粘土は杯土原料として上焼の素地になります。荒焼の杯土は、みクチャとマージを配合して使っています。押し型成形はロクロでひけない器物を成形する技法で、抱瓶や小物獅子などを成形する時の技法です。型おこし成形は、沖縄独特の厨子甕(骨壷)を作るときの技法で、胴と蓋を木型を用いて別々に作る特殊な技法です。

形を定め、それに沿って紐状の粘土を積み上げて成形する方法をひねり成形といいますが、沖縄独特の獅子はこの技法です。化粧土などを使って龍や山水などを形作り、生乾燥の器物素地に盛り付けて加飾する方法を沖縄では「タックヮーサー(張りつけ)」といいます。施釉技法として、素焼きをせず、生素地にいきなり釉掛けする技法があり、この技法を「ジーガキー(生掛け)」といって、沖縄の陶器製造工程の中でもっとも特殊な技法です。乾燥の時期を見計らって浸し掛け、流し掛け、ふり掛、布掛けなどで釉薬を施します。釉薬原料は、ほとんど天然の土石を使っています。下絵付けは、呉須、飴などで染付けし、また、本焼したのち上絵付け(赤・緑)する場合もあります。

技術と技法Ⅱ

窯は、傾斜地を利用して作られた登り窯です。荒焼窯の形態は傾斜地にトンネル状の窯をつくり、普通火口から薪で4日間あぶり、側壁たき口で約1日かけて焼き上げます。 上焼の登り窯は、傾斜地に数室の袋(焼成室)を作り、火口であぶったのち、たき口より順次上の袋に向って焼成していき、約27時間(10袋のとき)で焼き上げます。ガス窯はLPGを燃料として4時間ぐらいあぶり、約8~15時間で焼成します。

また、赤絵付の専門窯とフース窯を使用する場合もあります。他方、沖縄の陶器の特徴は、製品の形にも見られます。抱瓶、獅子、厨子甕、嘉瓶、(ユシビン)、カラカラー、壺類などがそれで、沖縄の風土や環境から生まれたものといえましょう。荒焼の成形法として、「ウシチキー(手ひねり成形)」というのがあります。予め器物の底を土締めし、その上にロクロ引きして器物の下胴体とします。半乾きの後、ロクロを回転させながら棒状の粘土を押しつけるように積み上げて成形する技法です。 化粧掛けに使われる粘土は、黄色を帯び、焼成後深みのある白土で、釉薬ともよく調和し、器物全体におちつきと暖かさをもたらしてくれます。

化粧掛けの方法として「フイガキー(振り掛)」というのがあります。皿、碗などの内化粧を施す場合の技法で、化粧土の適当な料を器物に入れて掌にのせ、手前に傾けて1回転させ器物全体にまんべんなく付着するようにします。